─ 全国47都道府県に放射線測定器を配備した市民観測所を ─
という目標を掲げた『測定器47台プロジェクト』というとりくみ
が始まっています。
その皆さんたちが3回目の福島訪問を終えてのレポートです。
(ご本人のご了解を得て、原文の固有名詞をイニシャルに変更し、
改行位置を調整させていただきました。)
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みなさま
山梨のHです。4月29日から、5月2日まで、KさんとIさんと一緒に
福島にいってきました。Iさんは、残ってまだ地元の市民の要望に
応えて、測量を行なっていますが、早く引き上げてきてほしいと、
僕は心配しています。
今日は、福島の状況について少し報告したいと思います。福島に
行った目的は、正確な放射性物質の拡散の情報も得られない福島県
の市民にガイガーカウンターを手渡し、市民の手で測定をして、
自ら正確な情報を入手してもらい、当面福島県からの避難を促そう
という意図がありました。僕たちは、三春町のMさん宅に泊めても
らいました。三春町は、桜の花が咲き乱れ、お寺も多く、こじんま
りした、穏やかでとても美しい町で、放射能のことさえ、忘れてし
まえば、昨日と今日は、何も変わらず、同じ時間が流れているかの
ように思われ、眼に見えない放射能被害の恐ろしさを認識し、避難
することは、如何に困難かということを思い知らされました。見た
目、家屋にはなんの損傷もみられず、そこにはいつもと変わらぬ自
宅もあり、生活の糧を得る基盤となっている日常生活があるという
状況下で、人々は、移住の決断ができるのだろうかと自分のことと
して考えると、本当に苦渋の選択だと思いました。
三春町は、郡山市や福島市に比べると、原発からの距離は近いに
もかかわらず、空間線量も比較的低い値で、放射能汚染は、同心円
的に拡散するものではないことを改めて認識しました。自動車に搭
載している線量計は、ある地区は、とても強く汚染されていたり、
200メートルも離れると、半減していたりで、汚染度はまだらで、
きめ細かい測量が必要なように思えました。郡山市では、開成山公
園は、地面1メートルで2.22マイクロシーベルト、1センチで2.5マ
イクロシーベルトととても強く汚染されていました。2.28マイクロ
シーベルトで、年間被曝量に直せば、20ミリシーベルトですから、
原発従事者の年間限度量20ミリシーベルトを越えていました。
(開成山公園での測定風景)
僕たちが、泊めていただいたMさんは、原発が爆発したとき、い
ち早く避難したそうですが、その後再び自宅に戻ってきました。昔、
チェルノブイリ周辺で、再び故郷に戻って暮らしている人々がいる
という話を聞いた時、どうしてなんだろうと訝しく思ったことがあ
るけれど、今はその人たちの心境がよくわかると言っていました。
長年、反原発の運動をしてきたMさんのところには、言いたいことが
言えない状況で、多くの人が相談や今の心境を語りにきます。
(地元の人たちへの測定説明会)
小学校の女性教員の方から聞いた話は、とてもショックだったの
で、少しその話を紹介します。彼女は、原発から20キロの少し外に
自宅があり、原発の爆発のとき、地震で壊れてしまったサッシの窓
を修繕するために屋外にいて被曝してしまったそうです。彼女には、
もう症状がでていて、水で顔を洗うと、チクチク、ヒリヒリと皮膚
が痛み、物凄くだるいそうです。弟さんは、もう下痢が始まってい
て、病院に通っているそうです。私は、原発の被曝で殺されるのか
と思うと、死んでもでも死に切れない。彼女の勤める学校では、あ
る教員が、被曝を恐れて休職して、避難すると申し出たところ、同
僚の教員からお前だけに逃げるのかと、罵詈雑言を浴びせられ、一
言も発せず、学校を離れたあと、いなくなった彼の机を蹴っ飛ばす
同僚もいたそうです。学校の中でも、一人や二人しかこの事態をお
かしいと思っている人がおらず、ほとんどは、文科省や教育委員会
の説明を鵜呑みにしていて、おかしいのではないかという人を、考
えすぎと軽く片付けられてしまって、なかなか話もできず、一人悩
んでいるそうです。
また福島では、長崎大学のY教授が、放射能は怖くないという講演
をいたるところでやっていて、そのためそれまでマスクを付けてい
た子供たちまで、マスクをはずしてしまうようになってしまったと
嘆いていました。またどこの家庭でも、避難するべきか否かを巡っ
て家庭内でも口論が絶えず、家族がばらばらになっているというこ
とでした。福島の人たちは、本当に大変な状況に追いやられている
と思い、言葉もでませんでした。
夜には、奥さんが妊娠中のカップルと、2歳の女の子のいるご夫婦
が訪れ、避難したい意志表示をしてくれたので、とりあえず、北杜
市に疎開しませんかと誘いました。Kさんと僕は、帰り道、参議院
会館で行なわれた集会に参加しました。厚労省や文科省の役人の答
弁は、まるで他人事で、同じことを繰り返すロボットのような答弁
で、これは、歴然とした国家犯罪だと思いました。「わたしたちは、
モルモットじゃないんだ」と叫んだ福島から来た若い女性の叫びは、
多くの福島県民の叫びだと思いました。
その後、二組のカップルの方が、この八ヶ岳に体験疎開をしに、
やって来られ、いまこちらに滞在しています。彼らのお話しを聞く
につれ、福島の人は、本当に大変な状況におかれていると、再び認
識を新たにしました。とりわけ子育て中の多くのご夫婦の心配は、
尽きなく、洗濯物も外に干せず、子供たちを外で遊ばせることもで
きず、窓も開けられず、と日常の何気ない営みさえ、出来ない状況
です。こんな状況は、決して長く続けることできず、近い将来もっ
と大変なことになるだろうことは、想像に難くありません。福島、
郡山、二本松といった都市の人口をあわせると、100万人近くの
住民がいて、日本全国の各地で、分担して移住の受け入れの準備を
しなければならないでしょう。
今日は、ぼくの住む北杜市の市営住宅を見てきました。市から補
助は、半年間にわたって住居を提供するだけで、光熱費や燃料代は、
自分に負担しなければなりません。国から支援は、一切なく、お金
を稼ぐ手立てがなければ、とても疎開さえ出来ません。国は、東電
や中部電力の救済ではなく、被災者ベーシック・インカムを考える
べきだと思いますが、行政を全くあてにできない今、僕は、いろん
なイベントに出向いて、市民によるファンドを募りたいと思ってい
ます。
そしてどうにか当面、疎開できるような状況を作りだし、疎開し
たくともできないでいる人たちが、疎開できるような状況を作りた
く思っています。そして福島から少し離れた地域の市民が、他人事
と思わずその地域で、受け入れ態勢を整えるような試みをしてくれ
たら、と思います。眼の眩むような話ですが…。
福島の原発が、これ以上の悪化を免れることを祈りつつ。
H拝
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by nonukes-1104
| 2011-05-14 11:25
| 福島事故現状